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判決文の誤り。

2012年12月19日 (水)

ベクロニウムの分子量は、557.82で、m/z279(分子イオンにプロトンが付加した2価イオン)のイオンであります。

この事件で有罪とされた唯一の証拠とされる大阪府警察本部科学捜査研究所で検出されたベクロニウム(筋弛緩剤マスキュラックスの主成分)を質量分析した結果、m/z258のイオンが検出されたとされているが、

弁護団は、m/z557(1価の分子イオン)かm/z279(分子イオンにプロトンが付加した2価イオン)のイオンが検出される。したがって大阪府警の検出したものは、ベクロニウムではないと主張しました。

仙台高裁判決文5ページから9ページ

(2)本件各鑑定自体の評価
   本件各鑑定を行った土橋吏員及び西川吏員は,本件各鑑定を行うための十分な学識と経験を有しており,その研究成果に基づき本件各鑑定もなされているもので,原判示のとおり本件各鑑定の手法,過程,及び結果に疑問とする点はなく,本件各鑑定は合理的で妥当なものとして是認できるのであり,所論指摘の点を検討しても,これが左右される点は認められない。
(3) 外国論文4点及び鑑定意見書について
   弁護人は,ベクロニウムの質量分析に関する外国論文4点(当審弁52ないし55)及び福岡大学医学部医学教室教授影浦光義作成の鑑定意見書(=影浦鑑定意見書)(当審弁56)に照らし本件各鑑定結果が信用性がない,と証拠意見する。すなわち,本件各鑑定は,m/z258をプリカーサイオンとしているが,標記外国論文4点によれば,ベクロニウムをLC/MSないしLC/MS/MSで質量分析した場合,ベクロニウムの分子量約557から導かれるm/z557(1価の場合)かm/z279(2価の場合)のイオンが検出され,m/z258のイオンが検出されたとする記載がない,ベクロニウムの分子量からみて,m/z258その他のイオンが検出されたとしても,そのことが当該イオンがベクロニウムに由来するとはいえない,したがって,鑑定資料から検出したイオンm/z258等を根拠として,その資料にベクロニウムが含まれていたと判断することはできない,などというのであり,また,影浦鑑定意見書によれば,影浦教授も本件各鑑定においてm/z258のイオン及びそのプロダクトイオンの出現から,これをベクロニウムであるとしたのは間違いであるとした上,西川,土橋吏員らの論文では,何故構造の類似したベクロニウムとパンクロニウムが異なった機序でイオン化するのか納得し得る科学的根拠が見いだせない,などとしていることからみて,本件各鑑定書には信用性がないと証拠意見するのである。

  しかしながら,土橋吏員の証言(第23回)によれば,LC/MS/MSにおいては,分析の過程で電圧,カラムなどの分析条件や使用器具に関し同じ条件で分析すれば,検出されるイオンの種類,発現時間は同一になるが,条件が変われば結果も変わるというのであるから,分析条件に関わらず分子量関連イオンが必ず検出されるといえない。
  土橋吏員らの分析方法は所論指摘の日本法中毒学会の雑誌「法中毒」1999年5月号に,「パンクロニウムとベクロニウムの分析方法」(=西川・土橋論文)(当審弁51)として掲載,発表されているのであり,本件各鑑定もこの手法によるものであるが,影浦鑑定意見書が指摘するまで,これが誤りであるとの指摘がなされてきたことがうかがわれず,その再現性,有効性が承認されてきたことがうかがわれる。
  
そして,土橋吏員らは,薬毒物の鑑定は年間150件くらい行い,これまで筋弛緩剤の鑑定は15件,資料の点数にして50点くらいの経験があり,うち生体資料の鑑定は10件くらいで,筋弛緩剤が検出された例は3件くらいあるというのであり,その薬毒物分析の実務経験を通し,LC/MS/MSの特性を踏まえた最良の分析条件と思われる条件を把握しており,これを生かしながら,分析装置及び分析条件を同一にして,鑑定資料を分析する郁度標品のベクロニウムについても分析をする必要性を強調した上,同一条件で,標品のベクロニウムで検出されたイオンの種類,発現時間と試料のそれとを対照して同一性の判定をしているのであり,べクロニウムからm/z258のイオンが出現していることを疑う理由はない。              
  なお,土橋吏員の証言(第24回,第25回)によれば,本件各鑑定において,各鑑定資料からベクロニウムの未変化体が分離・検出されていることが認められるから,m/z258のプリカーサイオンが,本件各鑑定資料中に存在したベクロニウムの脱アセチル化した変化体に由来するものでないことは明らかである。
 
これに対し,影浦鑑定意見書は,前記のとおりの意見を提出しているのであるが,影浦教授がこれまでどの程度ベクロニウムの分析経験を有するのか不明であるばかりでなく,添付資料から見て,その試験条件について,その装置が西川・土橋論文ないし本件各鑑定書と同様の装置を用いたか不明であり,分析条件が異なることは明らかである。影浦教授が,構造の類似したベクロニウムとパンクロニウムが異なった機序でイオン化するのを納得し得る科学的根拠が見いだせないからといって,西川・土橋論文が分析条件を呈示し,ベクロニウムであることが疑いようがないベクロニウム標本からm/z258のプリカーサイオンを得ているのに,同様の装置及び分析条件を用いてその再現性を確認しないで,自己の分析試験から西川・土橋論文の手法,結果を非難するのは一面的であり,本件各鑑定の信用性を損なうものとはいえない。
  さらに,外国論文4点は2000年以降に公表されたものであり,そのうち2000年に公表された当審弁55の論文は,ベクロニウムの検出についてはその代謝産物である3―デスアセチル―ベクロニウムを検出する方法が数件報告されているのみであるという時点のもので,ベクロニウムについて二価イオンを記載しているものであり,2002年以降公表された残る3論文は,ベクロニウム等の4級窒素筋弛緩薬について,いずれも6種類,7種類,8種類の多種類の筋弛緩薬を抽出し検定,あるいは検定,定量する方法を開発したとするものであって,そのうち,例えば,当審弁53によれば,4級窒素筋弛緩薬の抽出は困難であるとされ,文献報告された分析方法のほとんどは1ないし2種類の化合物を抽出するのに適した条件で実施されているが,同論文著者らは,7種類の4級窒素緩弛緩薬の一般的な抽出方法による検出方法を見付けたとし,当審弁52,54も同様の指摘や成果を報告しているのであり,これらの記載からも1ないし2種類の化合物を抽出するのに適した分析条件とは異なることがうかがわれるのであり,その実験条件の記載をみても,土橋吏員らのそれと同一ではないし,外国論文4点もベクロニウムからm/z258のイオンが出ることを否定しているわけでもない。
  さらに,外国論文4点及び鑑定意見書においては,ベクロニウムについてはm/z557ないしm/z279のイオンのみが検出されているが,上記各外国論文によっても他物質についてではあるが分子量関連イオン以外に分子の一部が開裂したイオンが検出されている例も見受けられるのであるから,分子量関連イオンのみが必ず検出されるといえないことは明らかである。
  また,外国論文4点及び影浦鑑定意見書の試験結果でも,フラグメントイオンには本件各鑑定と同様の249,356,398,416の1つまたは3つが出ているところ,弁護は,そのようなフラグメントイオンが出ていても,プリカーサイオンのm/z258が何に由来するか分からないから,ベクロニウムとはいえない,というが,本件各鑑定においては,ベクロニウムの標品自体からm/z258のイオンが出されて上記及び374のフラグメントイオンが出ており,本件各鑑定資料がこれと同様のプリカーサイオンで同様のフラグメントイオンを呈しているのであるから,ベクロニウムと認定した本件各鑑定に何ら信用性を疑う点はない。
  したがって,外国論文4点及び影浦鑑定意見書におけるLC/MS/MSないしLC/MSと分析条件等が異なることが明らかな本件各鑑定において,ベクロニウムの標品からm/z258のイオンが検出されたことが,不合理であるなどということはできないのであり,外国論文4点及び影浦鑑定意見書は本件各鑑定の信用性を左右するとはいえない。・・・・・・・・・・

この様に、土橋吏員は鑑定経験が豊富だが、影浦教授はどの程度経験があるか分からないから、土橋吏員の言っていることが正しいと認識して

さらに、「土橋吏員の証言(第23回)によれば,LC/MS/MSにおいては,分析の過程で電圧,カラムなどの分析条件や使用器具に関し同じ条件で分析すれば,検出されるイオンの種類,発現時間は同一になるが,条件が変われば結果も変わるというのであるから,分析条件に関わらず分子量関連イオンが必ず検出されるといえない。」と言うことは、科学とは何なのか全く理解していない裁判官の認識を露呈している。

分析して出てくる数値は、分析方法が正しければ誰が行っても同じ物質なら同じ数値であることは、科学の基本であることです。だからこそ原子量、分子量は、世界中どこでも同じ質量であるのです。裁判官は科学の基本すら理解していないことを露呈して有罪にしたのです。

参考までに、マスキュラックスの製造会社の臭化ベクロニウムの分子量は、637.73であります。  分子式は C34H57BrN2O4 です。

臭素の分子量(79.904)を除くとベクロニウムの分子量は557.82となります。

2012年9月11日 (火)

太陽は条件が変われば西から昇る(仙台高裁判決文より)

私は、仙台高裁に提出した弁護団の控訴趣意書を読み返して、大阪府警科捜研の土橋鑑定書がベクロニュウムを検出していないことを明確に指摘しているにもかかわらず、仙台高裁は無視していることに対し、仙台高裁の公判当時は、いきどうりでいっぱいでしたが。現時点では、仙台高裁が誤った判決を行って、えん罪を作った歴史に残る証拠として貴重な判決文であると思っております。

仙台高裁の判決文6頁から

 しかしながら,土橋吏員の証言(第23回)によれば,LC/MS/MSにおいては,分析の過程で電圧,カラムなどの分析条件や使用器具に関し同じ条件で分析すれば,検出されるイオンの種類,発現時間は同一になるが,条件が変われば結果も変わるというのであるから,分析条件に関わらず分子量関連イオンが必ず検出されるといえない。
 土橋吏員らの分析方法は所論指摘の日本法中毒学会の雑誌「法中毒」1999年5月号に,「パンクロニウムとベクロニウムの分析方法」(=西川・土橋論文)(当審弁51)として掲載,発表されているのであり,本件各鑑定もこの手法によるものであるが,影浦鑑定意見書が指摘するまで,これが誤りであるとの指摘がなされてきたことがうかがわれず,その再現性,有効性が承認されてきたことがうかがわれる。
 そして,土橋吏員らは,薬毒物の鑑定は年間150件くらい行い,これまで筋弛緩剤の鑑定は15件,資料の点数にして50点くらいの経験があり,うち生体資料の鑑定は10件くらいで,筋弛緩剤が検出された例は3件くらいあるというのであり,その薬毒物分析の実務経験を通し,LC/MS/MSの特性を踏まえた最良の分析条件と思われる条件を把握しており,これを生かしながら,分析装置及び分析条件を同一にして,鑑定資料を分析する郁度標品のベクロニウムについても分析をする必要性を強調した上,同一条件下で,標品のベクロニウムで検出されたイオンの種類,発現時間と試料のそれとを対照して同一性の判定をしているのであり,べクロニウムからm/z258のイオンが出現していることを疑う理由はない。              
 
なお,土橋吏員の証言(第24回,第25回)によれば,本件各鑑定において,各鑑定資料からベクロニウムの未変化体が分離・検出されていることが認められるから,m/z258のプリカーサイオンが,本件各鑑定資料中に存在したベクロニウムの脱アセチル化した変化体に由来するものでないことは明らかである。
 これに対し,影浦鑑定意見書は,前記のとおりの意見を提出しているのであるが,影浦教授がこれまでどの程度ベクロニウムの分析経験を有するのか不明であるばかりでなく,添付資料から見て,その試験条件について,その装置が西川・土橋論文ないし本件各鑑定書と同様の装置を用いたか不明であり,分析条件が異なることは明らかである。影浦教授が,構造の類似したベクロニウムとパンクロニウムが異なった機序でイオン化するのを納得し得る科学的根拠が見いだせないからといって,西川・土橋論文が分析条件を呈示し,ベクロニウムであることが疑いようがないベクロニウム標本からm/z258のプリカーサイオンを得ているのに,同様の装置及び分析条件を用いてその再現性を確認しないで,自己の分析試験から西川・土橋論文の手法,結果を非難するのは一面的であり,本件各鑑定の信用性を損なうものとはいえない。

この様に、土橋証言を鵜呑みにして分析条件が違えば違う指数値が出るなどと科学を全く理解しない判決をしているのです。

私は、この裁判官の判決文は、「太陽は東から昇るが、条件が変われば西からも昇る」というような判決だと思っております。

これを最高裁が何のためらいもなく、踏襲したことと思い震えが止まりませんでした。全く科学を無視した非科学的な知識を持った裁判官が人間を裁いている現実に、呆然とするとともに怒りと、絶対に許すことが出来ないと思いました。

追加 (2013年3月30日記載)

確定判決では、標品と鑑定試料(血清、尿、点滴ボトル)からベクロニウムの未変化体が検出されたとしていたが、昨年12月20日の検察の意見書では、変化体だったと覆したのです。

 

2010年9月30日 (木)

裁判官は、矛盾した判決文で有罪にしていた。

先日、ブログに「証拠隠滅と偽証では。」を掲載した後、誤字脱字等を調べているうちの、気づいたことが、というより裁判官は法廷での証言に矛盾した判決文で有罪にしたのでした。

土橋証人が、大阪府警科捜研のだれかが、宮城県警科学捜査研究所の方に、鑑定をする資料について、臭素含有の予備試験をやって欲しい旨依頼したことが有りますか。と聞かれたのに対し「いや有りません」と証言しているのです。

判決文では「・・・宮城県警科捜研に対し、今後鑑定資料を持ち込む場合には、臭化ベクロニウムの含有する可能性の高いものを選別してからにしてほしい旨依頼し、これを受けた宮城県警科捜研において上記点滴ボトル内の溶液につき臭素含有の有無の予備試験を実施することとした。・・・

こんな単純で明快な土橋証人の証言に、矛盾した判決で有罪にしたのです。

仙台地裁の判決文に、推認という文字が40カ所以上でておりますが、推認が裁判官の偏見でなさられたなら、恐ろしい思いです。

2008年2月27日 (水)

最高裁は、重大な事実を検証していない。

 最高裁判所は、重大な事実誤認を発見する努力を行わなかったことをみずから認めた決定であることがあきらかになったと思いました。

最高裁判所の決定は、次の通りでした。

主文

本件上告を棄却する。当審における未決勾留日数中400日を本刑に算入する。

理由

 弁護人○○○○ほかの上告趣意は、違憲をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。なお、所論は○○○らの行った鑑定には多々疑問があると主張するが、所論にかんがみ記録を精査しても、被告人が筋弛緩剤マスキュラックスを点滴ルートで投与することにより本件各犯行を行ったとした原判断につき、判決に影響を及ぼすべき法令違反又は重大な事実誤認を発見することはできず、同法411条を適用すべきものとは認められない。よって、同法414条、386条1項3号、刑法21条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

 私は、本日この決定を読んで、これで無実の人間を無期懲役に出来るとは恐ろしく思いました。

 今後、一つ一つ真実で、この理由をくつがえしてゆきたいと思いますが、とりあえず次の点について私見を記載します。 

・・・・・所論にかんがみ記録を精査しても、被告人が筋弛緩剤マスキュラックスを点滴ルートで投与することにより本件各犯行を行ったとした原判断につき、判決に影響を及ぼすべき法令違反又は重大な事実誤認を発見することはできず・・・

 マスキュラックスを点滴で投与して急変や殺人を行えることが可能であるかということです。

 マスキュラックスは現在医療現場では、効果的かつ医療目的に合った薬として使用されておりますが、どの様に患者に投与しているか検証していないのではないか、また点滴で患者に投与した場合(医療現場でこんな投与を行った事例は無いはずです。)、果たして人を殺すことが可能なのか、検証していないことが明らかになったと思われます。したがって記録を精査しただけでは重大な事実誤認を発見できなかったことは、当然なことだといわざるをえないと思います。

最高裁は、記録を精査することではなく、真実(この事件の場合は、医学と化学)を探求することが重要な課題ということを怠ったと言わざるをえません。

2007年4月28日 (土)

薬事法を知らない?検察官・裁判官

論告要旨256頁                                                                 ・・・加えて、被告人が平成12年12月4日夜多数のマスキュラックスの空アンプルが入っていた針箱を北陵クリニックから密かに持ち出そうとしたこと、被告人が不必要にマスキュラックスを発注していたことなどの各事実を総合すれば、被告人がMちゃん事件の犯人であることは、優に認められ、毫も疑念の余地がない。

論告要旨278頁                                                      ・・・加えて、被告人が不要不急なマスキュラックスの発注を依頼し、そのマスキュラックスを管理していたこと、北陵クリニックを退職することが決まるや、マスキュラックスの使用済み空アンプル19本も入った針箱を院外に持ち出そうとしたことなどの事実を総合すれば、被告人がA子ちゃん事件の犯人であることが十分に認められ毫も疑念の余地がない。

論告要旨313頁                                                        ・・・北陵クリニックを退職した日の夜に被告人が多数のマスキュラックスの空アンプルの空アンプルが入った針箱を北陵クリニックから持ち出そうとしたこと、北陵クリニックの在職中被告人が注文ノートに発注依頼を記入する方法で不要不急な多数のマスキュラックスを発注していたことなどの事情、さらに、被告人がKちゃん事件において、明らかな虚偽の供述に終始しているなどを総合すれば、Kちゃん事件の犯人が被告人であることに毫も疑念を入れる余地がない。

論告要旨347頁                                                        被告人が平成12年12月4日夜いったん帰宅しながら北陵クリニックに戻り、多数のマスキュラックス空アンプルが入った針箱を持ち出そうとしたこと被告人は北陵クリニック在職中不要不急なマスキュラックスの発注を行い、納品させたマスキュラックスを実質的に管理していたこと、北陵クリニックでは正規の医療行為として使用されず使途不明となっているマスキュラックスが存在すること、さらに、被告人が被告人質問で虚偽の供述に終始していることなどを総合するならば、S子事件の犯人が被告人であることは、毫も疑念の余地がない。

論告要旨364頁                                                         ・・・被告人が平成12年12月4日夜いったん帰宅しながら北陵クリニックに戻り、多数のマスキュラックス空アンプルが入った針箱を持ち出そうとしたこと被告人は北陵クリニック在職中不要不急なマスキュラックスの発注を行い、納品されたマスキュラックスを実質的に管理していたこと、北陵クリニックでは、正規の医療行為に使用されず使途不明となっているマスキュラックスが存在すること、さらに、被告人が公判廷において虚偽の供述に終始していることなどを総合するならば、Oさん事件の犯人が被告人であることについて何ら疑念の余地がない。

この様に、検察官は「針箱を持ちだそうとしたこと」と「不要不急なマスキュラックスを発注したこと」を理由に5つの事件の犯人であることを論告しており、

判決文27・28頁                                                  北陵クリニックでは、平成9年7月ころまでは、常駐の薬剤師が薬剤の管理を行っていたが、その後は、薬剤師を置かなくなったことから、薬剤を正規に管理する者がいなくなり、看護婦が、薬剤の在庫状況を適宜確認し、不足している薬剤があった場合には、前記薬品庫備え付けの「注射薬注文ノート」「注文ノート」又は「発注ノート」と呼ばれていたノートに、その薬剤の名称及び必要数量等を記載し、事務職員等がその記載に基づき薬剤販売業者に発注してその納入を受けていた。

この様に、裁判官は、マスキュラックスが毒薬であることを理解していなかったためか、この様な判決文になっているのです。

「針箱の持ち出し」については、12月4日退職を言われてから、北陵クリニックに戻った被告人が、手術室等をワックス掛けを行う等清掃した時に、廃棄すべきものを忘れていたので、廃棄しようとしたもので、詳細は別に掲載します。

  ここでは、検察が言う被告人が「不要不急のマスキュラックスを発注したこと」が、邪推であること。

さらに、裁判官が薬事法を学び発注を検証しなかったことが、次のとおり明らかであります。

1、 商取引上発注とは、購入する側が、販売業者に対し、購入する品目、数量等を伝え、発注者が納入を促す行為であります。つまり、被告人は発注したのではなく、注文もしくは発注ノートに記載だけで、販売業者に対し何ら意思表示は行っていません。

従って、発注したのは被告人ではなく、注文・発注ノートを見た事務職員等がその記載に基づき、購入の必要性を判断して薬剤販売業者に連絡して納品されていたのです。

2、マスキュラックスは毒薬です

薬事法(譲渡手続)
第四十六条  薬局開設者又は医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者(第三項及び第四項において「薬局開設者等」という。)は、毒薬又は劇薬については、譲受人から、その品名、数量、使用の目的、譲渡の年月日並びに譲受人の氏名、住所及び職業が記載され、厚生労働省令で定めるところにより作成された文書の交付を受けなければ、これを販売し、又は授与してはならない。
2  薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者、医師、歯科医師若しくは獣医師又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に対して、その身分に関する公務所の証明書の提示を受けて毒薬又は劇薬を販売し、又は授与するときは、前項の規定を適用しない。これらの者であつて常時取引関係を有するものに販売し、又は授与するときも、同様とする。
3  第一項の薬局開設者等は、同項の規定による文書の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該譲受人の承諾を得て、当該文書に記載すべき事項について電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて厚生労働省令で定めるものにより提供を受けることができる。この場合において、当該薬局開設者等は、当該文書の交付を受けたものとみなす。
4  第一項の文書及び前項前段に規定する方法が行われる場合に当該方法において作られる電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて電子計算機による情報処理の用に供されるものとして厚生労働省令で定めるものをいう。)は、当該交付又は提供を受けた薬局開設者等において、当該毒薬又は劇薬の譲渡の日から二年間、保存しなければならない。

この様に、判決文にあるようなことでは、マスキュラックスの購入はできません。

なお、針箱に空アンプルが入っていたことについては、「医療廃棄物の分別区分を知らない検察官と裁判官」を読んでください。

http://miyaginouka.cocolog-nifty.com/blog/cat23463580/index.html          

2007年4月11日 (水)

裁判官は、医療廃棄物の区分を知らなかったため、間違った判決をした。

判決文34頁                                             北陵クリニックでは、医療行為に伴って生じる廃棄物を、感染症廃棄物(ガーゼ、酒精綿、包帯などの血液等が付着した廃棄物)、感染症扱い廃棄物(使用済み注射針、縫合針、メスの刃など)、非感染症廃棄物(薬剤のからアンプル使用済み点滴ボトルなど)、一般廃棄物(薬剤の空き箱などもえるごみ)に分別することとし、職員は、廃棄物が生じるとその分別に従い、それぞれ専用のゴミ箱等に投棄していた。

と記載しているが、非感染症廃棄物として、薬剤のからアンプル使用済み点滴ボトルを混在している場合、廃棄物処理業者は、回収しないことを理解していないのである。

感染性廃棄物の適正処理について(平成4年8月13日厚生省生活衛生局水道環境部衛第234号)の通知の別紙「廃棄物処理法に基づく感染症廃棄物処理マニュアル」によれば

感染性廃棄物①液状又は泥状のもの(血液等)                               感染性廃棄物②固形状のもの(血液等が付着したガーゼ等)                 感染性廃棄物③鋭利なもの(使用済み注射針、メス、試験管、ガラスくず(空アンプル))                                                                                   非感染性廃棄物(医療行為等に伴って生ずる廃棄物のうち感染性廃棄物以外の廃棄物プラスチック(点滴ボトル)                                                                                  一般廃棄物(紙くず、厨芥等)

感染性廃棄物を収納した運搬容器には、感染性廃棄物である旨及び取り扱う際に注意すべき事項を表示するものとする。として更にバイオハザードマークを推奨しており、その種類は

(1)液状又は泥状のもの(血液等)赤色                            (2)固形状のもの(血液が付着したガーゼ等)橙色                      (3)鋭利なもの(注射針等)黄色

したがって、鋭利なもの(注射針等の中には、メス、試験管、シャーレ、ガラスくず等)つまり針箱の中に空アンプルが入っていることは、医療廃棄物の処理区分は正しいのです。

    判決文228頁                                            また、既に認定したとおり、北陵クリニックにおいては医療廃棄物の分別区分が厳格に行われていたのであるから、これらの事情に照らすと、そもそも手術で使用したマスキュラックスの空アンプルが針箱に廃棄されていたとは容易に想定し難く、したがって、針箱内に手術で使用したあるいは手術のために準備した筋弛緩剤のアンプルのみが入っていたという弁護人の主張はその前提において不合理である。

   判決文259頁                                             しかし、まず、既に認定したように、医療廃棄物の分別が厳格に行われていた北陵クリニックにおいて、本来空アンプルを捨てることが予定されていない針箱に筋弛緩剤の空アンプルを廃棄していたとの被告人の供述は極めて不合理である。

この様に、裁判官は、北陵クリニックの職員が医療廃棄物について間違った供述をしていることを鵜呑みにして、検証を怠ったため、弁護人の主張や、被告人の供述を不合理として間違った判決を行っているのです。