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2013年1月 2日 (水)

土橋鑑定は証拠・証明能力もないことが明らかになりました(概略)

土橋鑑定について内容を検討した結果 土橋鑑定は証拠能力も証明能力もないことが明らかであると思いその概略を理解していただくため掲載するものです。

1 鑑定とは
 今回の鑑定は、血清、点滴ボトル、尿(以後資料という。)から筋弛緩剤の成分であるベクロニュウムが検出されるかどうかを、調べるものであります。

2 鑑定の方法は
  液体クロマトグラフィーという分析装置と、質量分析装置を使って、
  ○ 資料の中に、ベクロニュウムの成分が含まれているか(定性分析)。
   ○ 資料の中に、ベクロニウムがの成分か含まれている量(定量分析)
    ○ 資料から検出されたイオンを質量電荷比(m/z)に応じて分離検出(質量分析)して、分子量関連イオンを検出する

    ○ 標品(北陵クリニックから持っていったと称されるマスキュラックス1本)を資料と同様に分析して、同様のデータが出たかを分析したのでした。

3 鑑定の結果
  鑑定書の記載から読みとれる鑑定手順は下記の通りであります。

 ① 標品は蒸留水で1mg/mlの濃度に溶解し、鑑定資料は前処理を施した上でLC/MS/MSの分析装置で分析を行いました。

 ②  標品のベクロニウムを質量分析したところMS1でm/z258のイオンがベースピークとして検出されたとしております。

 ③ 標品の分析終了後、m/z356についてその強度を示すマスクロマトグラムを表示したところ、保持時間約5、4分にピークを確認できた。また、m/z258をプリカーサーイオンとする全イオンの強度(電気量)を加算した全強度の時間変化(保持時間)を示すトータルイオンクロマトグラムを表示したところ、同じく、約5、4分保持時間の位置にピークを確認できたとしております。

 ④ MS1で検出されたベースピークであるm/z258をプリカーサーイオンとしてMS2でこれを開裂させた際のマススペクトルが図2下段である。プロダクトイオンとしてm/z258、356、374等が検出されたとしております。

 ⑤ 鑑定資料も同様の方法でLC/MS/MSによる分析を行った結果、同様の結果を得ることができた。よって、鑑定資料にはベクロニウムの含有が認められたとしたのでした。

4 弁護団の主張
 ① 土橋鑑定は、定性分析をLC(液体クロマトグラフィー)段階においても、MS(質量分析)段階でも一切行っていないのです。

 ② 土橋鑑定には、m/z258のプロダクトイオンのマススペクトルは表示しているが、肝心の標品と鑑定資料を質量分析した1段目の質量分析のマススペクトルの表示がないのです。
  
 ③ 土橋鑑定で観測されたイオンの値m/z258とそのフラグメントイオンだけとされているのです。
      しかも、標品及び鑑定資料からm/z258のイオンが検出した事実を示すマススペクトルは鑑定書に示されていないのです。

  ④ 土橋鑑定は、ベクロニウムの質量分析を行った場合にm/z258のイオンが検出されることを前提に行われているのです。
      これは、西川と土橋が「ESIーLC/MSによる筋弛弛緩薬パンクロニウム、ベクロニウムの分析」と題した講演要旨「日本法中学会第18回年会講演集」を前提としているのです。

5 鑑定の経過と結果のまとめ
(1)土橋鑑定には必要なデータ表示がなく再現性がないのです。
   土橋鑑定において示されているデータが極めて限られており、同分析を再現することが可能かとの疑問は第1審段階から指摘されていました。
   実験ノート等の提出もなく、どのような手順で分析を行ったのかを明らかにする客観的証拠は全く提出されていないからであります。
   土橋鑑定の内容がその再現性、客観性を担保するために不十分であることは、実験ノート等の不存在だけに止まらない。ベクロニウムの定性、定量に必要な基本的なデータさえ提示されていないのであります。
   定性のためのデータであるクロマトグラム、マススペクトルの提示は全くないのです。
   定量のためのデータ表示が全くないのです。
   本件のような精密な定量分析において検量線等のデータ表示がないことは、これを再現できないことを意味するのです。
   再現性のない結果だけが表示されている鑑定を公正であると評価することはできないことは、当然なことです。
(2)土橋鑑定が分析した化合物はベクロニウムではないのです。
   土橋鑑定に対する疑問は必要なデータを示してないと言う点だけに止まらない。結論そのものが誤っているからであります。
   ベクロニウムの質量が約557であることは公知の事実であります。
    これを質量分析したばあい、検出されるイオンはm/z557あるいはm/z279である。これは、2審・弁52ないし56により明らかであります。
    原審は、分析条件により検出されるイオンは異なるとしているが、この考え方は、質量分析とは相容れないものであります。
   ESI-LC/MS/MSにより化合物を分析した場合に、分析条件により変化するのは、LC(液体クロマトグラフ)の保持時間、そして、検出されるイオンの強度だけであります。
   検出されるイオンの値、すなわちマススペクトルに変化はないのです。
   前述の通り、弁護人が提出した論文ではESI-LC/MS/MSによりベクロニウムを分析した場合に検出されるイオンは、m/z557あるいはm/z279であり、フラグメントイオンとしてもm/z258のイオンは検出されていないのです。
   ESI法によるベクロニウムの質量分析においてフラグメントイオンである、m/z258のイオンがベースピークとして検出されるとする報告もないのです。

   よって、m/z258のイオンが、ベクロニウムの分子量関連イオンが開裂したものでないことは明らかである。m/z258のイオンは、質量約258あるいは516のベクロニウムとは別の化合物の分子量関連イオンなのであるのです。

 土橋鑑定が検出した定性・定量した質量258あるいは516の物質はベクロニウムではない。これを、ベクロニウムとして分析対象とした土橋鑑定のあやまりは明らかであります。

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